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小説「闇」
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小説「強き女(ひと)」
(1)>(2)>(3)>(4)>(5)>(6)

小説「新説桃太郎」
(1)>(2)>(3)>(4)>(5)>(6)

短編
「帽子」(1)「平泳ぎ」(1)「たんぽぽ」(1)「海」(1)「犬と私」(1)>(2)


それぞれの あとがき

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 二つの瞳でしっかり見られていると彼は確かに感じていた。このことは昨日今日始まったことではない。彼が生まれたときから始まっていた。時には厳しく時には優しく見つめるその眼は幾つもの表情をとった。片方の眼が怒りに満ちた時でも、もう片方の眼は必ずしもそうではなかった。しかしその瞳たちは確かに何かの目的に向けて同じ脳内から指令を伝達されているように動いていた。

 ある時、たまらなく彼はその眼が嫌になった。何ものにも見られずに生きてみたかった。孤独を求めたのだ。
天照大神が岩戸にお隠れになった時と同じだった。
神は全てから逃れたかったのだろうか。日々の果たすべき役割。兄弟たちとの確執。みな様々な要因があったに違いない。しかし彼女はやがてでてきたのだ。踊りにつられてのことだった。
彼もまた隠れた。狭い部屋に隠れた。眼はうろたえた。眼にとって初めての経験だった。眼も悲しい踊りを踊った。手もない足もない表情だけの踊りだ。それがいっそう悲しかった。
 
 彼はついに出てきた。眼は彼のほうを見ずにそっと泣いた。眼の縁から一握りの水が流れでていた。その涙はやがて大きな大海となり彼を包んだ。彼は波にさらされながらもやすらかに眠った。そこは彼の揺りかご だった。幼き日の神聖な場所。
深い海の底の岩陰から眼はこっそり彼をみつめていた。彼はもう大人になっていた。二つの瞳は喜びの涙を流したが海中でそれは塩水と混ざり合い、どこか巨大な何かに吸収され消えていった。

そしてやがて眼は浮き上がり波に揺られる彼のそばを通り抜けて高く高く遠く遠く上がっていった。太陽の光は二つの眼を盲目にした。見る力を失った眼はさらに天上へと鮮やかな虹に運ばれていった。
その時彼は食い入るように自らの子供を凝視していた。ただ、一瞬天空を見つめると静かに一粒の悲哀の結晶を目から落とした。
 

無 序章

 灼熱の太陽が降らす光をさえぎる木々の頂上を風がゆらす。ザワザワザワザワ・・・・と。枝葉が相互にからみつき静かな光の奪いあいが続いていた。そんな闘いの中、はるかに急激な生命の奪い合いが始まろうとしている。雲は一時的に影を作るが、やがて流れていってしまうものだ。そんな短い間の間隙を狙って二匹の獣は対峙している。辺りは静寂が時を支配し、戦いの無用さを知る生物たちは非情にことの成り行きを静観している。

 一匹いや一人は赤い、それもまるで血で染めたような微妙に黒ずんだ髪をこの地域を流れるパローテ川の方向からそよいでくる冷たい空気になびかせながら身構えて立っている若い少年。日に焼けた肌は汗で反射する光で輝きながら本来の黄色っぽく黒っぽくまたは白っぽくともいえる奇妙な色あいをみせていた。鋭い眼光は相手の目を射抜き貫通させるほど烈しく同時にその暗黒の色からは何の感情も読み取れはしない。

 対する一匹の獣は軽く少年の3倍はある体長を持ち、口にはナイフのような牙が備えられうなり声が生暖かくもれでている。三つの眼が隈なく相手を観察し、前足の巨大な裂爪は一撃で少年を殺すには十分すぎるほどだ。後ろ足はなく、三股のしっぽらしきものが獣の頭上で狙い定めたようにゆっくり振り子を真似て動いている。

 危ない、逃げろ。敵わないからやめろ。警察や軍隊に連絡を、などとあわてふためく理由は少年には理解できないだろう。またそのように考えた人々はやがて自分たちの考えが間違いであったことを知ることになる。
少年は動いた。視覚に頼るものは触れることも難しい様な動きだ。そして速い。だが猛獣の野生あふれる爪、尾を使っての攻撃を紙一重で避けながらも浅い傷がシラレク皮の服で守っていない体の部分に増えていく。海流の渦が発生したように引き寄せられる獣はまさに少年の意力に飲み込まれる・・・時。赤い閃光が放たれた。いや血だ。獣はひとつの眼を潰され痛みに耐えかねたように恐ろしい怒りの叫び声をあげる。
そして、しばらく二匹は睨みあった。
とうとう獣は二目をのこし暗い閉じた森林の奥へと帰っていく。

 返り血を浴びた少年は軽く息を吐くと、少し下を向いて何か考えたあげく西の方へ疲れた足取りで歩み去っていく。いずれかの死を待ち望んでいたハイエナのような生き物たちも自力での食料調達へと出かけ始める。ここはあらゆる物事の始まりの地。いかなる法も罰もありはしない。あるのはただ自然の掟のみ。生きることそれが全てなのだ。



 

 少女は男の傷口にそっと唇をはわせ、接吻をするように勢いよく血の水源を吸い上げる。だが血はなおも流れ続ける。彼女の作った傷口からあふれ出す血を必死にむさぼり飲む少女。目には一筋の涙。
苦い。何か金属の混じった不思議な味がする。これは恐らくオリハルコンという金属の味に違いない。他の誰にもただの血だったとしても少女にとってそれは架空の金属そのもののように恋焦がれてしまうものだった。
飲む。もうずいぶん飲んだ。だがなおも放たれる血。
失われた血の重さを誰が知る。涙の渇きは血の渇き。
不滅の魂を司るラファエルよ、どうか血を止めておくれ。
やがてちぎれゆく細い赤い糸をどうかきらないでおくれ。
無情にも溢れ出す血は、いくらかの水をふくみ、いくらかの鉄を含みいくらかの愛をも含んでいる。
血を飲み干す娘は耐え切れなかった過去の現実に自分を不可視の世界へとおいやっていた。
少女の純潔はそれを守るべきものの手によって奪われたのだ。
邪悪な精液が少女の体に巣食っていた。
だがなおも憧れた血の縁。
そして悪夢は去ったのだ。
男に対する憎しみはもうない。
父親の血を失った死体がただそこにあった。
 

犬と私 下

 こうして私たちの共同生活は始まった。
最初私は犬は役に立たないだろうと考えていた。しかしそうではなかった。犬はするどい嗅覚で様々な食べ物(主にキノコや果物など)を見つけてきたのだ。私も負けずに島に打ち上げられた漂着物を拾ってはそこから道具を作り魚獲りをおこなった。最初、魚はまったく獲れなかったが、じょじょにこつをつかみ始めると後は日々食うものに困らないぐらい漁ができるようになった。食料の確保はできたのである。犬と私はお互い食べ物をわけあって食べていた。
 犬は私の孤独も癒してくれた。常に人とともに生活してきた私にとってたった一人の人間という状況はつらかった。そこで暇な時、私はよく遠くにボールのようなものを放り投げてはそれを犬が取ってくるという遊戯を共に楽しんだ。ハッハッハと息を切らせて駆けてくる犬の頭を優しくなでてやると犬はさらにうれしそうに尻尾を振り回すのであった。私たちは友となった。そして犬をオリバーと名づけた。
 だがそんなある日島に嵐がやってきた。私たちはなんとか作っておいた粗末な小屋に隠れるように身を横たえながら天気が回復するのを待った。だがこの地方特有の天気なのか3日たっても4日たっても晴れは戻ってこなかった。ついに貯めてあった食料はなくなりオリバーと私は激しい空腹に襲われるようになった。私たちは体力を消耗しないように横たわり小屋の天井から漏れてくる雨水を飲んではなんとか繰り返される飢餓をしのいだ。
だが私はいつしか日にちを数えるのも忘れてしまった。風雨は容赦なく島を攻め立てる。
私は最後の力を振り絞って食料を探しに出かけようかと思ったが波が高く、さらには風で様々な物が乱れ飛ぶとても危険な状態であったため断念した。恐怖という本能が私を圧倒したのだ。
空腹と恐怖で意識が朦朧とする中で小屋に戻るとそこには一匹の犬がいた。(もちろん友であるオリバーだったのだがその時たしかに一匹の犬と感じたのだ)
犬と目が合った。
私はアメリカを発見したコロンブスの心境になった。ここにまだ食料があったのだ。
だが私はすぐにその考えを打ち消した。あれほど仲の良かった友たる犬をどうして殺せるだろうか。
だが私の生に対する渇望はその思いを超えていくことになってしまった。
ある夜、私はうつ伏せになっていた犬に近づき飛びかかった。抵抗はなかった信じきった瞳がただ私をみつめていた。弱弱しい鳴き声をだす犬の首を太いロープでしめ、絞首刑の死刑囚のように天井から吊り下げた。
ゴキッ。
犬の首の骨が折れる鈍い音がした。
「君が?世をは??」
この一連の行いの間私は一人ふと国歌を口ずさんでいた。
私は動かなくなった犬をそっと降ろし、皮を切り始めた。
島でみつけたナイフは切れにくかった。犬をさばくのに苦労した。だが力が湧いてきた。不思議な力だった。
そして私は生の肉をひとつ切り分けた。
生臭い臭いだ。寄生虫がいるかもしれない。食べて平気だろうか。一瞬で多くの疑問が頭に浮かんだ。しかし私の欲望は即座にその疑問を否定した。
口に血のついた生肉ををいれ、かむ。
かむ。
かむ。
が、噛み切れない。ガムをかむように何度もかみしめる。
ふと私は犬と私の関係を、絆を思い出し涙があふれてきた。
それでも極上の霜降り肉を味わうようにしてじっくりとかみ終えると、飲み込んだ。
欲求を満たした後とたんに眠くなった。私は犬の死骸を涙に濡れる目でみつめながらいつの間にか眠っていた。
次の日嵐は去り数日後私はこの島から救出され、ただ一人日本に帰った。
それ以来犬をみるたびに私はせつせつとこみ上げる後悔と同時にあの肉の味を思い出すのであった。

 
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犬と私 上

 今私は一匹の犬とどことも知れぬ無人島にいる。海を眺めると見事なまでに何も見えない。波打つ海岸の水際で足を少し深く砂浜にめりこませじっとただ地平線を見つめていた。

 船が難破したのは夜だった。ある一等航海士のけたたましい叫び声が他の船員に伝染した。甲板の上では暗闇の中でパーティーをしてるように船員たちでごった返していた。私は広い大広間でいつもの客独特の優越感に浸りながら、せわしなく働く船乗りたちの様子を遠くからガラス越しに眺めていた。
「おいどうしたんだ何かあったのか」
最初聞いたのはつまらない好奇心だった。だが、青い顔をした乗務員はなかなか答えようとしない。目はキョロキョロとあたりをさまよい、まるで混乱している。まさか何かまずいことでもおこったかなと考えていると船内アナウンスが流れた。
「皆様まことに申し訳ございません。船内に穴があいてしまい浸水しております。まもなく本船は沈みます。」
わたしはその通告を冷静にうけとめていたが、なによりも不快だったのは取り乱したご婦人がたのヒステリックな金切り声だった。そんな中声はさらに続けた。
「ですが落ち着いてください。ただいま皆様を緊急用ボートに乗せる準備をおこなっております。まずは女性、子供から乗り込んでいただきますので船員の指示に従って行動してくださるようお願い申し上げます。」
船員たちはまず女性子供を大急ぎで分けて、ボートに乗せ始めた。私は初老の男性なので一番最後ということらしい。正直、船長のフェミニストぶりには腹が立ったが、わめき散らすのも紳士ではないので、ここは押し黙る。
だがいつまでたっても私たち最後の数十人は誘導されない。しまいには船員たちがボートに乗り込み始めたではないか。異変に気づいたわれわれは
「おい、待て俺たちはどうする」
と今にも海に逃げ出そうとする船員船長たちにつかみかかろうと走り出すが、それより早く彼らは私たちを置いて生命あふれる海に輝かしい船出をしてしまった。
残された十数人の男たちは口々に悪態や懇願をボートに向けて繰り返すが、帰ってきたのは無情な言葉だけだった。
「すまない、定員以上の客を乗せてしまったんでボートがたりなくなってしまったんだ」
ふざけるなよだったらおまえらが残れ。だがすぐ怒りを通りこして冷静になった私は近くに浮き輪でも置いてないかと必死に探し、とうとうそれを視界にとらえた。だが次の瞬間船体は大きく傾き音を立てて垂直に倒立したかと思うとそのまま海にひきずりこまれていく。私たちは順次すさまじい力で荒々しく無残に洋上に放り出されていった。
 次に気がつくとそこは無人島であった。私は一応助かったらしい。そして何故か一匹の犬が流れ着いていた。恐らく沈んだ船にペットとして乗っていたのに忘れさられてしまっていたのだろう。この島を一周して回ったが、他に打ち上げられた人の姿はなかった。
いるのはたった一人の男と一匹の犬だけだった。

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 磯の香りがする。少年は大きく息を吸い込み潮の匂いと味を力いっぱい吸い込んだ。
少年はまず軽く海の中に足を入れ、手で海水を胸のあたりにかけてから
ゆっくりと身を水中へと沈ませる。少し深いところまできて手足を軽く使って泳ぐと、水面から顔だけを出しボーっと明るい中空を見上げた。
もう夏が過ぎようとしていた。
空には一筋の飛行機雲が浮かんでいた。それは西の空にまでずーっと続いている。
先週まで住んでいた生まれ故郷の方向だ。
少女との最後の別れの場面。
少年「明日引っ越すことになった」
少女「そう」
少年「なあ」
少女「なに」
少年「おまえ・・・」
(しばしの沈黙)
少年「覚えてるか、かぶと虫とったこと」
少女「ええ 楽しかったわね」
少年「まあそうだな」
(再び沈黙)
少女「お別れね意気地なしさん」
少年「じゃあな意地っ張り」

少年と少女はこうして別れた。
寂しさそれとも後悔だろうか、波に揺られる少年の目に涙がうっすらと浮かぶ。
今までより大きな波が少年の顔を覆いつくした。少年は思わず一度海水に顔を入れ濡れた顔を再び出すと、立ち上がる。
少年は無性に叫びたくなった。
沖の方を向き三角形を手で作り口のあたりまでもっていくと思い切り叫んだ。

「おーい サメがきたぞ?」

近くを泳いでいた親子連れが一瞬沖の方をチラとみてまた何事もなかったかのように泳ぎ始めた。何を勘違いしたのか遠くでは少年に手を振ってくる女までいる。
ああ平和だ。
ここには喧騒につつまれた中にも静かさがあった。
少年は爽快な笑みをつくり、ああああと大声をだし海に飛び込んだ。


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たんぽぽ

ある日君はこの世を去った
ある晴れた日のことだった
見渡せる限りの空 深くいつもの明るさをたたえ
降りしきる風 そよかに流れをその体にあてつける
君と出会ったのは 幼い日のことだった
あの日は雨だったね
溜まり始めた水たまりの間を軽やかな足取りで歩いてきた君は
僕に言ったね
この雨はおまえがふらせたのかと
僕はそんな君を熱にうかされた子供のように見ていた
そのときの君の瞳は赤いルビーのように燃えていたね
僕は君におびえたよ
やがて月日は過ぎ 君との関係は新たな春とともに始まりを告げる
二人は共に大人のいない公園を放課後走り回ったね
おお あの頃の君はなんと好奇心に満ち溢れていただろう
土を掘り返しては虫をみつけだし ばらばらにし君は笑ったね
花をみつけた蜜蜂もああは笑いはしないだろう
だがそんな君もある日泣いたね
あれは僕が悪かった
君との約束を守れなかった僕が悪かったのだ
もう二度と約束を破らないでと君はいった
僕はそれを恋に恋する乙女のようにはじらいもせず受け入れた
まさに神に生贄にされた人間のような心境だった
君という魔物に僕は敗北したのだ
それからというもの君にとって僕は都合のいい男だったろう
君は頬を染めてほかの男と夢のような幻のような日々を過ごしていたね
僕は黙ってそれを見守り 家で泣いた
いつしか君も真珠のような涙を流すとき僕のところにきたね
君がその熱情に燃える青春をかけた恋に破れた時もそうだった
ピアノをひく手の指のような滑らかな様子で君は泣いたね
僕は黙って身を暗いうれしさに包まれながら共に泣いたよ
ああ君はいなくなった
一生君は僕のものになったんだね
そして永遠に届かない存在に
僕はただ君の思い出のみを心に抱いていきていく
それが君への花むけとなるだろう
ああ 君恋し中 夜露に濡れるたんぽぽの美しさはひときわなり

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新説 桃太郎 6

 「ひぇッきしっ!」(加藤茶?)
桃太郎は胡椒による物理的、化学的刺激によってものすごいくしゃみをしました。断じてこれは誰かが桃太郎の噂していたわけではありません。
 するとなんとそのくしゃみの勢いで一番近くにあった火がきえてしましました。あたりが少し暗くなったところで今度は動物たちが暴れだしました。それぞれは縄に縛られたまま暴れまくって他の火も次々と消してしまいました。あたりが真っ暗になったもんですからさあ大変。
鬼たちは驚き戸惑っていたところにやってくれました桃太郎。
「うわあああ 殺される?」
と叫ぶと鬼たちは慌てふためきます。
鬼たちの隠語で殺されるとは「ころころされる」つまり鬼たちのもっとも怖い「ころころ」という行為をされるという意味だったのです。
そこに犬がじゃれるようにガブと近くの鬼にじゃれつくように甘噛みすると、
「なにしやがる」
とばかりに鬼たちは相手が誰かもわからず殴り合いをはじめてしまいました。
桃太郎たちはなんとかあたりを逃げ回っていましたが、ついに疲れ尽きて倒れ寝てしましました。

 おきるとびっくり朝がきてあたりが明るくなってくると、鬼たちが横たわっているではありませんか。なんと桃太郎たちは勝ったのです。
桃太郎は財宝を持ち帰り娘と結婚し幸せに暮らしたかと思いきや、実は島に忘れ去られていた娘の父親が自力で鬼ヶ島を脱出し財宝をよこせと家にたびたび押し寄せ桃太郎たちを困らせましたとさ。娘の父は泥棒だったのでした。
あ??桃太郎かわいそうなことで。

おしまい

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新説 桃太郎 5

 はてさてなんとも簡単に捕まってしまった桃太郎御一行様たちは世にも恐ろしい鬼たちに食われるのを今か今かと待つばかりでした。
 鬼達はそんな桃太郎たちを尻目に話あっています。
「おい今度の人間はどうしてくれようか」
「煮て食うべきかな」
「いやいや焼いて食うべきだな」
なんと鬼達は桃太郎たちをどうやって食うかを話し合っている様子、これを聞いていた桃太郎は声を涸らして助けを求めます。
「おっとーーおっかああ??たすけてくれ?」
しかし当然、そんな声ははるか遠くのパチンコ屋で今日も稼いでいる夫婦には届きはしません。(もっとも、パチンコ屋の騒音は桃太郎が近くで話しかけても二人にはきこえないほどうるさいのですが。)
鬼達は夜通し話し合ったあげく三人を丸焼きにすることにしました。
そしてその日の夜、ご馳走を待ちわびる鬼達は全員集まって大きな松明(たいまつ)に照らされた広場で桃太郎たちを味付けはじめました。
 鬼達は桃太郎には胡椒をふりかけ、娘には塩を、犬には小麦粉、猿には肉タレを雉には嫌がらせのためだけに目薬をさしました。

すると胡椒が鼻に入った桃太郎は一つ大きなくしゃみをしました。

さてさて桃太郎たちははたして鬼をどうやってやつけるのでしょうか。

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新説 桃太郎 4

 しばらく船を漕ぎながら進んでゆくと、はるか海の向こうに岩の塊のような大きな島が見えてきました。
「ついたわよあれよ桃太郎さん。」
娘はそう叫ぶと桃太郎の方をむいて意地悪そうに笑いました。

 こうして桃太郎たちの船はとうとう鬼ヶ島の砂浜にたどりつきました。
あたりはどんよりと暗く崖の上ではカラスが群れをなして死肉にありつこうとあたりを飛び回っていた。元来た本土は遥か遠くにぼんやりと浮かんでいる。猿は不安そうに尻をかき、雉はもう全てを諦めた調子で羽をばたつかせている。犬はというと尻尾を振って、まるで状況を理解していない様子。
「こっちよ」
と娘が言い、桃太郎たちは鬼に、じゃない、娘に手を引かれてぽっかりと開いた洞窟の奥に入っていった。
しばらく進むとまた日の光さす場所にでたかと思うと、そこは鬼達の住む村でした。
そこには身長2メートルは軽くある鬼たちがうろうろと動き回っていました。鬼達の顔は恐ろしく極悪面で喧嘩が絶えないのかどの顔にも生傷が新しい。桃太郎達はそろそろと歩きますが、なにしろ二人と三匹。犬などはワンワンとわけもわからず吠え立てる始末、すぐに鬼達につかまってしまいました。

桃太郎よどうする危機(ピンチ)だぞ。

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新説 桃太郎 3

 ある時桃太郎が三匹の獣たちをアホ面かいていつものように誰もいない道を連れ歩いていると、浜辺に一人の娘が倒れていました。
「もし、どうした娘さん」
と桃太郎がそーっと金目のものを持っていないか物色していると、娘が気がついた。目が覚めた娘は縄につながれた陰気な猿、犬、雉(きじ)をみて驚いていたが、バツの悪そうな桃太郎に礼をいって
「どうかお願いします。父が鬼ヶ島の鬼達に連れ去られてしまいました。一緒に助け出してください。」という。
桃太郎は鬼の名前を聞くと180度方向をかえて逃げ出そうとした。
(鬼なんて冗談じゃない。鬼の蹴り一撃で死んでしまうわ。)
ところが、娘は凄まじい速さで追いかけてきて桃太郎の首根っこを捕まえ、「どうかお願いします」と桃太郎の体を空中に浮かせて揺さぶった。桃太郎は絶対に鬼のもとにいきたくないのでしきりと応戦しますが、力かなわず、
「ギブアップ、わかったいこう」
ととうとう云ってしまった。
lこうして桃太郎は半ば強引に(いや完全に力ずくで)鬼ヶ島へいくことになってしましました。

 娘があらかじめ準備していたらしい船に三匹と桃太郎を放り投げるようにのせると直ちに出航してしまった。桃太郎はあまりの恐怖に歯をがちがちいわせながら、波に揺られて沖へ出て行きました。

かわいそうな桃太郎。いったいどんな運命が彼を待ち受けているのでしょうか。

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平泳ぎ

 中年の男はある日のことプールにきていた。
どうやら平泳ぎをしているらしいがどこかぎこちない。
何故だろうか。

彼は小学生の頃水泳を習っていた。
住んでいる場所が田舎だったため、バスに揺られて隣の町まで送り迎えされて通った。始めの数ヶ月は順調だった。バタアシに始まり、クロール、背泳ぎとすいすいとこなしていった。
だが、そんな中、平泳ぎがどうしてもできなかった。何度も教えられるが、何度もできない。いつしか、見捨てられるように次のクラスに進むこととなった。
少年はその時はこれでいいと思ったかもしれなかった。
だが、中学校に入ってそれは白日の元にさらされることとなる。
ある夏水泳大会があったのだ。
そこで彼は平泳ぎを泳ぐことになってしまった。
他のスポーツは得意だった彼は当然のように期待された。黄色い声援が飛ぶ中、彼はありもしない力を発揮し・・・・
なんてことはあるはずがなかった。
少年はダントツの最下位だった。
歓声はため息に変わる。冷ややかな調子で誰かが囁く。
彼は自分に失望した。


そんなことを思い返しながら男は下手くそな平泳ぎを泳ぐ。
まぎれもなくこの泳ぎも男の一部であった。
うまくやれたこと。
うまくやれなかったこと。
思えばうまく出来なかったという記憶がはるかに重く刻まれた幼少時代。
人間とはそんなものだと思った。
男は今では一人前の男になっていた。
彼は過去から今へとのびる、この泳ぎを愛でるかのように受け入れ、黙々と泳ぎ続けた。
傍らにはそんな彼の姿を見つめる優しく微笑む妻の姿があった。



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新説 桃太郎2

 そんなある日桃太郎は怪しい商売を始めた。きな粉とあんこを組み合わせた素人のにわか作りのまずい団子を日本一の黍団子(きびだんご)として売り始めたのです。(その中のひとつにはからしが!)

 しかし、値段をべらぼうに高くしたので誰も買わなかった。
いつものように桃太郎は某華道家かりやざき邸の前に店を出していた。(今度も失神かカーリー)
客が来ない中いらいらしていると犬の散歩にきていた子供がもの欲しそうに黍団子を見ていた。
「ねえ、これいくら」
桃太郎はけだるそうに指一本をたてると男の子は早合点したらしく百円玉を置いてパクリと団子を一つ食べてしまった。
「こら なにしとんじゃわれー」
桃太郎は烈火の如く怒り幼い子供の財布をひったくると
「おい百万円の団子どうしてくれるんじゃ」
とはげしく某ボクシング亀○家の父のようにガンをとばした。(ゴキブリ呼ばわりはしてない)
「そんなお金持ってないよー」
と男の子が泣いても桃太郎は許しません。(まさに鬼です)
そうしてその子の家にいき借金の利息としてその家で飼っていた犬、猿、雉(きじ)を荒縄で首のところを縛り付けて連れて行きました。
(本当は親には相手にしてもらえず腹いせに盗み出したらしい、この時桃太郎は半べそかいていたとか)
役者はそろいました。さあいよいよ冒険の始まりです。

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強き女(ひと)6

 次に染子が考えるべきは相手の心理であった。閻魔大王が最初の手にグーを出したということは次は何をだすだろうか。
もし万が一グーを再び出したとしたならば、閻魔はそのまた次の手にグーは出しづらくなる。「じゃんけん」において相手に手を読まれるのは避けたい心理が働き、グー、グーの後にはチョキかパーを出したくなるというのがその理由である。
ということは次はチョキかパーだ。チョキを出せば負けない。
そこまで瞬時に考えた染子はチョキを出そうとする。だが待てよ相手に読まれていたら。額を汗が流れ落ちる。地獄の熱が一層段々と二人の戦いを熱くする。よまれているならば・・・。相手はグーでくるか。
そこまで考えたところで
「(あいこ??で)しょ」
小鬼の掛け声が塔の最上階に響く。
染子はまた動けなかった。グーのままだ。
相手の手は・・・

グー。
危なかった。
しかし、これで相手の手は2回続けてグー、次の手はグー以外になる確率が高い。だが再び閻魔に見透かされてるようでなんとも不気味だ。
再び小鬼が
「あいこ?で」
と声を出す。
混乱した染子はじゃんけん爺の言葉を思い出す。
「いいか。もしどうしても相手の手がわからなくなったときはパーを出せ。人は最もチョキを出す確率が低いからだ。」
ええいままよ。佐藤さん力を貸して。
そう願いをこめて染子はパーを出した。
相手は・・・・・

グー。
勝った。
染子は喜ぶというより安心した様に腕を下ろすと、三回連続グーを出すという強敵、地獄一の使い手である閻魔大王も
「負けた」
と潔く言った。
その瞬間目の前が真っ暗になり、染子は気がつくと神社の広場に倒れていた。
もう春が来ていた。
ほどなく桜の花が満開を迎える頃、佐藤は戦地から帰ってきて不思議な体験を語った。
「たしかに一度戦地で死んだと思ったんだが生きていて草原に倒れてたんだ。」
それから二人はめでたく結婚し3人の子供に恵まれ、幸せに暮らしました。
鬼たちは染子のいう佐藤がどの佐藤かわからなかった。なので、佐藤という人間をみさかいなく生き返らせたため今では佐藤という苗字が日本には多いそうな。

おしまい。

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強き女(ひと)5

 男の初心者は通常グーを出すということを染子は経験上知っていた。だが、相手は閻魔大王そんな推測は成り立たないだろう。
では一体どんな「じゃんけん」をしてくるのだろうか。
二人は手を前に出して地に足がめりこむほど踏ん張り、構える。
染子はじゃんけんの師である近所のじゃんけん爺に教わった龍の型である。一方閻魔大王は足幅を広く取り、腕を前方に長く伸ばし構える独特のものだった。染子は当然こんな構えをする流派にお目にかかったことはなかった。
だが幸いその手は拳を握り締めている。
染子はしめたと思った。
なぜなら染子は相手の手がグーから別の手に変わるかどうか見極められるのである。
つまり相手がグーから変化させようとすればチョキを出しておけば負けることはないし、グーのままであればパーを出せばいいのである。
一歩間違えば後出しの汚名とともに反則負けとなるが彼女は完全にこの技を自分のものにしていた。これは膨大な経験のなせる技である。雨の日も風の日も「じゃんけん」を繰り返してきた女の業であった。
 
 小鬼が号令をかける。
「じゃんけ??ん」
針の穴に糸を通すような集中力で染子は相手の手を見る。
グー、グー、グー。
変わった。
染子はその瞬間チョキを出そうとした。
だが、彼女のじゃんけん師としての本能に危険を知らせる何かが襲ってきた。
いけない。
「ぽん」
彼女は硬直してしまってグーのまま。
相手の手は・・・・・

「グー」。
なんと閻魔大王はグーから動かすと見せかけてグーに戻す二段石拳の使い手であった。恐るべき相手。もうこの技は使えない。
染子は焦りを感じた。だが小鬼の声は無情にも続く。
「あいこ??で」
 

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強き女(ひと)4

 そこまでいったところで、小鬼が染子を助けようと話にはいってきた。
「やめとけ、閻魔大王様は地獄一のじゃんけんの使い手なんじゃぞ。それに負けたら自分の魂がなくなる。つまり死ぬんじゃぞ。」
 小鬼のいうことは事実であった。閻魔大王は今の地位を地獄の古来からの戦闘様式である「じゃんけん」で勝ち取ったのだ。
 そして一方染子にとっても「じゃんけん」は特別な競技であった。
 6才の時兄とのおやつ争奪戦に敗れてからというもの修練に修練を重ね、現在53連勝中であった。普通にじゃんけんをすればご理解いただけるだろうが、この数字のすごさはまさに地上一といっても過言ではないのである。
 しかし、染子には不安があった。自らの肉体から魂が抜けていくという事態を想像できない恐ろしさがあった。脂汗が首筋から流れ落ちる。鼻頭にもうっすらと汗がにじむ。
じゃんけんとは精神力の勝負なのである。このままでは負ける。
そう思った染子は閻魔大王に話しかけた。
「もし私が勝ったらあなたはどうなるの。」
「わしが負けるはずはない」
染子は閻魔大王にもプレッシャーをかけたいと必死にきくが、答えは同じだった。
だが、小鬼がここでも口を出す。
「閻魔大王様が負けたら、地位を失って追放されるじゃ。」
とたんに閻魔大王の顔が青くなり、ぶるぶると震えだす。だが、そこはさすが、その表情を出したのは一瞬だけで、すぐ平然をよそおった。
 だがそれは染子の心持ちを楽にした。
 今五分と五分になったのである。
 小鬼がでてきて審判をつとめるため二人の間に立った。
 今まさに地獄一の使い手と地上一の女が雌雄を決する時なのであった。


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強き女(ひと) 3

 染子は小さな小鬼についていくと、そこには螺旋状(らせんじょう)の階段が見えた。
 小鬼が小さな手をおいでおいでとするので彼女は階段をぎしぎしといわせながら緊張した表情で上っていくと、やがて最上階についたようだった。
 そこにはやはり染子からすれば小さな、そして鬼にとってみれば大きな豪華な椅子がひとつ置いてあり、席にはたくましい髭を生やした鬼が座っていた。
「閻魔大王様?」
小鬼が声をかけると、寝ていたらしく閻魔大王は
「桃鬼ちゃ?ん」
と寝ぼけた様子で云うので、小鬼が肩をとんとんと叩くとと「ん、なんじゃ」
と目が覚めた様子。
染子がいることに気づいて一つ咳払いをすると、
「この者はなんじゃ」
と小鬼に聞く。
「この者は死人を死なすとかなんとか申しておりますじゃ」
「ん?死人を生き返らすではないのか、この馬鹿」
閻魔大王が持っていた扇子でポカと一叩き。小鬼は「痛い 叩くことないじゃ」とふてくされていじけてしまった。
 そこで改めて染子はどうして自分が地獄にきたか理由を話した。
「どうか佐藤さんを生き返らしてください」
そういって染子が頭を下げると風が起こり閻魔大王は吹き飛ばされそうになり必死に椅子にしがみつく。
「何をするこの馬鹿娘、お前の母ちゃん でべそ」
どうやら閻魔はかなり口の悪い鬼らしかった。染子は怒る気もせず今度はゆっくり頭をあげると閻魔は
「条件がある」
と言い出した。
「何ですか」
と染子が聞き返すと、しばらく押し黙った後閻魔はにやりと笑いながら云った。
「わしにじゃんけんで勝つことができれば生き返らしてやる」


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新説 桃太郎 1

 昔々、あるところに若い夫婦がいました。妻の方はすでに子供をお腹に宿していました。俗に云うできちゃった婚です。働き者の二人はせっせと毎日パチンコに通い、お金を稼いでいました(なんとパチプロ!)。
 ある日、父親がパチンコで景品として桃を大量にもらってきた日、赤ん坊の産声が家の中から聞こえてきます。子供が生まれたのです。父親はその子を桃太郎と名づけ、気が向いたときにかわいがりました(ちゃんとかわいがれ!)。
 
 桃太郎は小さい時から不思議な子でした。
普通の子より早く立ち上がっては必死に「そんなの関係ねえ」のギャグをおむつをはいたまま繰り返しました(流行です)。そんな桃太郎の面白くなさに母親は(作者も)心を痛めながらも、いつも暖かい態度で買ってきた冷えた弁当を食べさせていました(ちゃんと作れヤンママ)。
 
 学校での成績はというと、こちらは変なことにこだわりなかなか漢字さえ覚えようとしません。例えば、1+1=2ではなく田の文字ではないかということを執拗(しつよう)に繰り返すのです(本当にしつこかったらしい)。初めは笑っていた先生はしだいにそんなことばっかり言う桃太郎に冷たくなっていきます(作者体験済み)。
 でも桃太郎はへこたれませんでした。ミッキーマウ○の絵を大量に複製して売り歩き寂しさを紛らわしていたのです。現代であればあの著作権にうるさいディズニー(会社)が黙っているはずがありません。でしたが、幸いこの時代まだディズニーは存在していませんでした。そんな偶然に助けられながら桃太郎は元気に成長していきました。
 
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強き女(ひと) 2

 染子は気がつくと、そこは激しく暑い場所で、目の前には血のような赤い池があった。熱が体を通り、内臓を燃やすように地面の下から下から湧き上がってくる。もうろうとした頭を抱えながらあたりを見回すと遥か遠くに何やら高い塔がそびえているのが見えた。ここは地獄に違いないと思いながら、その場所を目指して染子は弱弱しい足取りで、歩いていった。

 段々と建物は近くなり、何やら不思議な形をしていることに染子は気づいた。頂上に大きなダストシュートのような先の太く延びた筒状の物がついていて、その中に空から白いふわふわした球状の炎が吸い込まれていく。彼女はそれをしばらく眺めていたが、やがて意を決したように
塔の門に入っていった。
「もし誰かいませんか」
声をかけるが返事がない。中に恐る恐る入っていくと、何やら奥の方で
陽気な声が聞こえてきた。
「ぐつぐつ煮よう。ぐつぐつ煮よう。地獄の釜でぐつぐつ煮よう。」
染子は声のする方へ進み、そこにあった部屋に入ると大きな釜が真ん中に置かれ、その縁に小さな鬼がいて、中のどろどろした物を混ぜ合わせていた。
「なんじゃお前は」
鬼は染子に気がついて声をかけた。
「もしや生きたまま地獄にきたんか。なんとこれは一大事じゃ。閻魔大王様に報告せねばなるまいじゃ」
鬼は鼻を曲げ、小ずるそうなおでこを自分でペシペシと叩きながら急いで釜を混ぜ始めた。
「ちょっとまっとれ今おわるけのお」
急いで釜の周りを走り回る小鬼の愛くるしさに思わずこぼれそうになる笑みをこらえながら染子は鬼をもっとみようと顔を近づけていく。
すると染子の息でバランスを崩しそうになる小鬼が
「なにをするんじゃこの鼻息娘」
と怒り出す。そんな様子に親しみを感じた彼女は何を混ぜてるのか聞いてみると
「これはじゃなあ、魂じゃ。地上からやってきた魂をここできれいにあらっとるんじゃ。」
とふうふう息を切らせながら答えると今度は染子に
「こんな所に生きとる身で何しにきたんじゃあ」
と聞き返す。
「実は私死人を生き返らせたくて、ここまできたの。」
「なんじゃと。ほんに命知らずじゃなあ。閻魔大王様はそんなこと簡単にはお許しにはならんぞい。」
「じゃあ 許してくれるかもしれないのね」
「とりあえずこい。閻魔大王様に会わせるじゃ」
そう言って鬼は釜をぴょんと降りるとさらに奥の部屋へ歩き始めた。
 
 
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帽子

 ひっそりと静まりかえった住宅街を一人歩きながら、私は家に向かっていた。時折、散歩中の年配の御婦人が声をかけてくる。
「こんばんわ」「おつかれさまです」
見知った顔はいなかったが、それは単に私が覚えていないだけかもしれない。男にとって近所付き合いとはほとんどがそんな感じで進んでゆく。

そういえば半年程前にでた地域の運動会は・・リレーにでたな。ふと、その時走った公園にいってみようかという気になって、いつもの帰り道からそれていく。おぼろげに残る記憶をたどりながらアサガオの咲くその公園の前まできてみると、一組の親子がすでに公園に来て遊んでいた。幼い少女は丸々と太り、ふっくらとした頬を一層大きく見せるように砂場の周りを元気よく走っている。かたわらで見守る少女の母親の頭には赤い帽子が乗っている。母親が名前を呼んで、気をつけるよう注意を促すと少女は何かに反抗するように、さらにからからと駆け回るのだった。

 私は近くのベンチに腰を下ろし、息子の事を思い出しながら二人を見つめる。
「元気にしているだろうか。この前あったときはすっかり一人前の男の表情になっていた。きっとつらいことがあったに違いない。」別れた妻の手紙には最近は仕事が忙しく、会わせることも難しいと書き添えてあった。

 夕暮れが近づき、私の影はすっかり長くなり、まだ遊んでいた親子の方へしだいに伸びていった。私はその影を動かして二人の親子を包み込むように手を動かそうとする。その時、公園に強い風が吹き抜け母親の帽子が舞うように飛ばされた。二人は帽子を追って私の影から逃げるように離れていく。
私は思わず立ち上がった。
が、影はそれでも二人には届かない。
私は寂しげに笑うとそっとそのまま公園をあとにした。


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強き女(ひと) 1

戦時中・・引き裂かれた男女どれほどか・・これはそんな物語のひとつである



 降りしきる桜の中、陽気に照らされながら二人の男女が歩いている。男の方は当世風に制服を着こなし、颯爽と下駄を鳴らしながら小道を進む。一方女はその肘に腕をからませるように連れ添っている。その顔には友人に都合してもらった化粧が薄く塗られていた。突然二人は立ち止まると耐えかねたように見つめあい、口を開く。
 「佐藤さん、私いつまでもあなたのことお待ち申し上げております。今、あなたはお国のため死をもいとわぬお心もち、それが私には悲しくてなりません。」と女が云うと、
 「なんの染子さん君のためにこそ死ねようとも、君だから言うがお国の為に死ぬつもりはないよ。必ず帰ってくるから祝言をあげよう。」と云って男は女の肩に手を伸ばす。
 抱き合う二人に花びらが永遠を約束したかのようにいつまでも降り積もっていた。こうして二人は暗い戦争の最中、共に将来を誓い会った。
 佐藤が戦地に行ってから後、しばらくすると染子の家は空襲にさらされ疎開し、田舎で肩身のせまい思いをした。中には立場を利用して染子に言い寄ってくる下衆な男までいたが、染子は佐藤を待った。

 やがて、戦争が終わり夏が過ぎ、秋が終わり、冬が来ようとしても帰ってこない佐藤。そんなある時、一人の帰還兵が佐藤の家を訪ねた。それを聞いて染子は何かわかるかもしれないと喜び勇んで隣町まで駆けつけた。しかし、その男は暗い話をもってきた使者だった。佐藤は死んだと男は語ったのだ。

 それを聞いて染子は三日三晩泣き尽くしたが、ある日ひょっこりと姿を表して「あの人はきっと生きています。」と言い放ち、苦しい家計を助けるため働きにでた。これには染子の両親も閉口した。誰かいい夫でもみつかれば染子のためにも家のためにもよいと思ったからだ。油まみれの苦しい工場勤めは染子を苦しめたが、彼女は佐藤の帰りをじっと待ち続けた。

 そんなある日神社にお祈りにいった染子は石段を登り社の前までくると奇妙な声がする。「・・・明日はいよいよ地獄との道が開く時だなあ」「うん、やっと地獄に帰れるな。」初めはあまりにも小さな声なのでようく耳を澄ましてみるとはっきりとそう聞こえた。「しかし人間たちに知られたら事だ。死人が生き返るなぞとな。」「いやまったく大変なことになるだろうよ。」染子はそっと賽銭箱の裏を見てみるとなんとそこには小さな鬼が二匹いるではありませんか。一匹は青い太った温和な雰囲気をした鬼、もう一匹はするどい目つきをした赤い鬼。慌てて口を塞いで思わず声を出しそうになるのをこらえながら、二人の話に聞き入ってみると、なんとあくる日に地獄との門が開き死人を生き返らすことも可能だといいます。染子はもしかしたら佐藤は死んで地獄に行ってしまったのかもしれないと思い、旅立つ決心をしました。 

 そこで、にわかには信じられませんでしたが次の日、神社の桜の木の影に隠れて鬼達を待っていると暗い穴がぽっかりと開いて、そこに鬼達が入っていった。しかし穴は小さくて指がやっと入るほど。覚悟を決めた染子は真っ黒な穴に指をいれるとあっというまに体が吸い込まれ、気がつくとそこはまったく違う世界、地獄だった。
 

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第十三話 魔痕 下

 ついに壁画の下絵を見せる日がやってきた。唐理は自信満々に絵を持って出かけていった。およそ数百年前から建つこの寺院の壁画は遠い唐理の先祖が書いたものだった。再び自分たちの手で壁画を描くのが悲願であった父を始めとする一族は彼を楽真という絵師のもとに弟子入りさせた。そう、その時から唐理は一族の夢を背負わされていたのだ。
 
 そんな過去の出来事を思い返していると、いよいよ唐理の番となった。黙然と頭をたれ深くかしこまる彼の目は真っ黒な意志で溢れていた。絵をみせると周囲から笑いが漏れた。何故だと憤った。だが、釈然としないまま帰り道を歩いていた唐理は帰るとその理由を知った。なんと見せるはずだった絵が家にあるではないか。何者かがすり替えたのだ。家にいた泡狸に聞くと「知らない」とだけ答えた。唐理は棺の仕業と決め付けた。前々から酒の席でも陰気な棺を不快に思っていたからだ。

 棺が帰ってくるなり唐理は掴み掛かり争いになる。そこにはまさに夢破れた男の、そのためにだけ生きてきた者の醜さがあった。そして棺はいつものように刀を抜き、刺した。唐理は棺のはだけた着物の間からのぞかせた腹のあざを見て驚いたように一瞬硬直し死んでいった。「お・おまえは・・」それが最後の言葉だった。
泡狸はそれを見て笑った。ははははははは。泡狸の笑いは遠く寺院にまで響いていた。

<第一部完>


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第十二話 魔痕 中

 唐理という名の絵描きがいた。彼は近くの高名な寺院の壁画を描くという夢を持っていた。日々町のあちらこちらに出かけて行っては所構わず腰を下ろし、筆を走らせていた。そんなある日、二人の浮浪児らしい少年たちが道の向こうから歩いてくるのを見つけた。唐理は旅の者を見かけては家に招き話に興じるのがいつしか習慣になっていたものだから「今晩寄ってかないかい」というと、二人は構わないといった様子でうなづいた。

 それから数晩、棺と泡狸は男の酒の飲み相手となった。まずい安い酒であったが本人はすこぶる上機嫌で自らの苦労や、まもなく実現しそうな夢のことを幾分誇張気味に嬉しそうに語った。ある晩男はいつもと違った暗い調子で、自らの命が長くないこと、そして昔我が子を殺しそうになった事があると告白した。泡狸はそんな親がいるものかと俄然相手にしなかったが、その子が遠くの親戚に預けられたところまで聞くと棺のことを少し考えた。「もしや二人は親子ではあるまいか」と。馬鹿げた考えだと思った。そこで傷つけた場所を聞いてみるとやはり棺のあざと同じ左の腹なのであった。棺は寝ているようだった。話そうかと泡狸は迷ったが、不気味な暗い欲望が芽生えてきた。その夜泡狸は遅くまで何事かに思いを巡らせ眠りについた。復讐の時は来たのだ。


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第十一話 魔痕 上

 人には運命があるというのを信じるだろうか。この棺にも確かにそれはあったようだ。なぜなら、この話で棺は自らの遠い過去と知らず知らず向き合うこととなるからだ。また、不浄なる道を阻む邪神といへども、この出来事を止められはしないだろう。
 
 水の音がする。おそらく近くに滝でもあるのだろう。ひんやりとした空気が進む先から流れてくる。泡狸は棺の後をそこら中にびっしりと根をはっていた木々に足をとられながらもいつものごとく、ついていっていた。やがて、ぽっかりと広い球状の空間が棺たちの歩みをぱったりと止める。ふうと息を吸い込んだ棺は着物を脱ぎ、湧き出る泉に「えいや」とばかりに勢いよく頭から飛び込んだ。しばらく泳ぎ回った後「こっちへこい」とほとりに座る泡狸を呼び寄せる。泡狸は迷いはしたがいつしか寝食を共にする棺に心を許していたのだろうか。なにか体に引っかかった針を抜くような気持ちを抱えながら裸になって入水する。しばらく互いに無言で泳ぎ回っていたが、ふと泡狸は棺の体に大きな「あざ」があるのを見た。真っ赤なものだった。一瞬血かと見間違うほどの赤黒いものだった。棺は「生まれつきだ」とだけ答えた。思えばこの時不吉な予感とともに泡狸は水辺の苔に気をとられながら水から出た。



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第十話 揺らぎ 下

 「気にすることはない。言っていたとおり他人なぞ放っておこう。それとも今出て行って死刑になるなんて馬鹿げたことだ。おまえの父親もそれを望んでなどいない。」棺は優しく囁きかけた。
 「あなたの父親は待っているのです。あなたが罪を告白するのを父親の声を聞いて苦しいでしょう。辛いでしょうそれでこそ人なのです。」
と泡狸。
 棺と泡狸は暗黙の了解で賭けをしていたのだろう。
 棺は厳然たる歴史の継続のための生。肯定的な生。それがどんな生であろうとも。一方泡狸は反省の哲学。それは自我の抑制と否定の思想であった。情に従うのもそれだった。だからこそ泡狸も自らの口を閉ざした。棺に死なれるわけにはいかなかった。
 ある日土雲はどこか様子がおかしかった。声をかけても返事をしない。「母さん」と叫んだきり発狂したのだ。
 棺はそれを見て取ると一刀のもとに土雲を斬り捨てた。あっという間のできごとだった。泡狸は轢かれた人間のごとく横たわる死体の血が多頭の蛇を描くように流れていくのを黙って見つめていた。そして知っていた。棺が盗みに入る晩手ぬぐいを持ち出していたのを。二人はその夜村を出た。
翌日土雲の父は処刑された。彼に息子の死は知らされることはなかった。

 
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第九話 揺らぎ 上

 事の経緯はこうである。
 夜、棺と土雲はこの村の家々に盗みに入った。止める泡狸を縛り付けて出て行った。成果は上々だった。ある家に多くの金があった。それを全部盗み、山に隠した。
 だが、次の日村は大騒ぎになった。役人に収めるはずの金が盗まれたのである。土雲たちはそんな村人たちを笑って過ごしていた。しかし
不思議なことに犯人の持ち物が見つかった。手ぬぐいである。赤の布地に虎の刺繍(ししゅう)がしてあった。土雲の母の形見の品だった。村中が犯人を探した。ついには棺たちに疑いの目が向けられようとしたとき、一人の人物が名乗りでた。土雲の父、編笠である。
 村の人間たちは驚いたが、一方で安心した。これで金の在り処もわかると考えたからだ。が、編笠は頑として口を割らなかった。手ぬぐいは息子のものだと彼は知っていたのである。「拷問をかけてはかせよう」焦った村人たちは犯人と名乗る男を責めた。静かな町で男の叫び声だけが響く。その声を聞きながら土雲は以前にもまして怨みのこもった目を虚空の父に向けて、じっと座っていた。


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第八話 不明

 何故私はこの男と旅をしているのだろう。
 棺の後ろを歩きながら泡狸は思う。必死にその行動から探った。肉親の死の理由を。片時も目を離すまいとした。だが、泡狸からみて棺という者の動機は単純明快であった。欲しいものは奪い、それ以外には冷酷な無関心さが溢れていた。だからこそだからこそ見えてこなかった。何故あの時父が死なねばならなかったのか。ただ黙って棺は泡狸を受け入れた。重苦しい旅であった。
 二人はある時、紅蛇の里に行き着いた。寂れた農村だった。その村には放蕩生活を送る男がいた。口癖は「人間一人でいきてくもんだ」だった。棺は男を気に入ったらしかった。その男のみすぼらしい家に行って、しばらく共に生活することになった。男は土雲といった。泡狸のことを聞いて笑った。「おいおいばかなことはやめな。誰もそんなことは望んじゃいないぜ。それに親だって先に死ぬ因果。親なんて関係ねえさ。」
泡狸は熊は、父は望んでいないかもしれない。だが私自身の意思で来た、と自覚した。一方で自らの守るべきものを放り出したという思いもあった。
早く決着つけねばならぬとも考えた。
 
 あくる日事件が起こった。


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第七話 邂逅(かいこう)

 泡狸は一人町はずれを歩いていた。棺らしい男がこの辺りに向かったと聞いたのだ。すれ違う人たちは皆家路に向かっている。人波をよけながらさらに東の方へと急ぎ歩く。人影もなくなったころ、ふと道の片隅に寝そべる男が目にとまった。明らかに服装は旅人のそれであり町の人間ではないようだ。泡狸はたまらず声をかけた。
 「あの・棺という男を知りませんか。」返事がない。寝ているのかと思い顔をのぞきこむ。「あっ。」泡狸は思わず声をあげた。忘れようとしても忘れられないその顔は・・棺だった。
 「何の用だ。」棺は片目を開け自分の前に立つ少年をみてそう言った。上半身を起こすと長く後ろに伸びた髪が肩にかかる。
 「私は 私は地虫の町の泡狸といいます。あなたに殺された。熊の息子です。あなたはあなたは何故・・」言葉が詰まる。後から後から涙が溢れてくる。父を思い出す。思いも溢れてくる。それを必死にこらえる。
 「数え切れないほど人を殺した。」棺は夢遊病者のような目で泡狸に言った。「何故父を殺したのです。」少年は涙も乾き始めたころ問いかける。棺は何も答えないまま、町外れに歩き始める。
 泡狸は静かに棺の後を追いかけていった。

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第六話 雨そして

 雨が降っていた。絶え間なく続く水の矢は4人をいらつかせる。棺を追う泡狸ら一行は棺の近くまで迫っていた。だが地面がぬかるんでおもうように足が動かない。まるで沼地のように地面が沈み込んでいく。「泡狸。親父の仇を見つけてどうしたいんだ。」年輩の夜義が問う。「何故父を殺したのか聞きたい。その後はそれからきめます。」泡狸は父を尊敬していた。日々人のため家族のために汗を流し厳しくもあった熊。何故死なねばならなかったのか。答えは見つかっていない。4人は茶色の道を焦る気持ちを抑えながら進んでいった。
 
 一方棺は女に出会った。人里離れた場所に一軒の家があった。棺は略奪しようかともおもったが他人に優しくする偽善者もいるものだと知りしばらく様子を見た。女は体を売って暮らしを立てていた。病に冒され苦しんでいた。「生きたくはないのか」棺は女をうながし医療の進んだ町に向かった。
 だが金がなかった。医者も誰も相手にしてくれなかった。女は死んだ。棺は深く失望した。何に。世界にだ。この世に対する憎しみが増す。俺はどうすべきか。棺は考える。燃やした。町を燃やした。罪なきものたちも死んだ。本当に罪がなかったとしたならばだが。棺にとって他人は皆他人。個人という認識はなかった。それ故の行いだった。
 
 
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